漢字 1-漢字制限の歴史2014-09-22 12:52

日本の漢字システム
「拡張新字体」がよくわからないという話があったので,先日(9/20)のプチゼミ:フォローアップ校正では,漢字について復習をかねてレクチャーしました。それでも(駆け足だったせいもあって)腑に落ちないようなので,こちらに少しずつまとめていきます。

まずは日本の現在の漢字システムの状況です。
図のように,常用漢字(かつての当用漢字),教育漢字,人名用漢字,JIS漢字という4つの規則があります。

明治以降,漢字の扱いをどうするかという検討や議論がなされてきましたが,具体的に制度となったのは1946(昭和21)年の当用漢字が最初です。

5万とも10万ともいわれる数のある漢字を,だれもがすべて読み書きするのはとても無理なことですから,漢字の扱いをどうするかというのはけっきょく漢字をどこまで制限するかということになるわけです。

一時は,いやいやいっそのこと仮名だけにしよう,ローマ字にしよう,エスペラントもあるよ,と,さまざまな提案がなされていました。仮名派のカナモジカイというのはつい最近まで活動していたくらいです(2013年に解散し,任意団体となったとか)。

終戦直後に制定された当用漢字も,「日常使用する漢字の範囲を定めた」制限的なものでした。表外字は使ってはいけない,とまでは規定されてはいないものの,ほぼそうした文脈で使われてきました。

この当用漢字がのちに常用漢字となっていくわけです。

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右開きと左開き2013-10-01 11:06

ちょっと気になる記事がジャパンナレッジのブログにありました。

右開きと左開きを逆にとっている人が増えているらしいのです。扉が「右開き」の冷蔵庫は本体が右にくる(開けた扉が左)……!

教室で本の外観の話をしていて——縦組の本は右開き,横組の本は左開き,と——,どうも混乱している様子があったのはこれでしたか。

いつのまに逆転したのでしょうね。


「右開き」と「左開き」(「日本語,どうでしょう?」第179回)
http://club.japanknowledge.com/jk_blog/nihongo/20130930_179.html

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『法令用字用語必携』2013-08-30 16:03

『法令用字用語必携』
法令用字用語研究会監修『法令用字用語必携』第4次改訂版
ぎょうせい,2011年


専門の資料というのは別のことでも役に立ったりということがあります。

この小冊子は,エディタースクールの『校正必携』と同じように常用漢字を音訓の五十音順に並べてありますが,文字が大きいので見やすくなっています。用例欄も広くて,参考の語例のほかに「法令において用いる場合の書き表し方」がゴシック体で載っています。そうだったのか,と膝を打つものもあったりします。

また「法令における漢字使用等について」(平成22年内閣法制局通知),「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令)も読んでおいて損はありません。

参考資料として,「公用文作成の要領(抄)———公用文改善の趣旨徹底について」(昭和27年内閣通知),「現代仮名遣い」(平成22年改正),「専門用語の統一に関する次官会議申合事項」(昭和29年),「異字同訓の漢字の用法」(昭和47年国語審議会漢字部会参考資料+平成22年内閣告示「常用漢字表」)も採録されています。

誤植というより古い表記なのかと思われるものがありますが(キッコとあるのはたぶんキッコーのことです),もともとが「昭和56年……12月に発刊した『改訂 法令用字用語必携』を全面的に改訂したもの」のせいでしょうか。

それにしても,法令関係なので元号表記なのですが,ピンときません。頭の中でいちいち西暦に変換しないと前後関係がわかりづらいです。

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『雑誌記者』2013-08-04 18:51


池島信平『雑誌記者』

どちらも中公文庫の池島信平『雑誌記者」ですが,左は1977年のもの。背が焼けて,カバーの右端も色が変わっています。右は2005年の改版。2005年の改版は,編集部による不適切な表現についての断りがあることと,佐野酳眞一の解説が追加されています。

2005年に限定復刊されたときに書店で捜したものの,見つかりませんでした。そのままになっていたのですが,先日『満州出版史』(岡村啓二,吉川弘文館,2012)に満州文藝春秋社のことや池島信平のことが出てきたのです。そこで検索してみたところ,ありました! Amazonってなんでもあるんですねぇ。

「改版」されたものは組版が違います。

『雑誌記者」1977年

1977年のものは,8ポ,43字×16行,行間6ポ。
36年も前のものですから,周りがすっかり茶色に変色しています。

『雑誌記者』2005年改版

2005年のものは,12.5Q,40字×16行,行送り21H。
こちらを読んでから初版を見ると,字が小さい!

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『ソローニュの森』2013-04-28 17:10

田村尚子『ソローニュの森』
田村尚子,シリーズケアをひらく,医学書院,2012年


ジャン・ウリ院長によって1953年に創設されたラ・ボルド精神病院に滞在し,撮った写真と文章。医学書院のサイトには,

〈写真家・田村尚子氏の震える眼は、この伝説の病院に流れる「緩やかな時間と曖昧な日常」を掬い出します。〉

とありますが,まさに「緩やかな時間と曖昧な日常」の写真たちです。


制作面からみると,改行の下がりがちょっと変わっています。最初の段落は字下げなしで2段落目からは改行2字下げです。横組なので,欧文の組方っぽくしているのでしょうか。

ジャケットの著者名と写真に亀裂が入っていたり写真が白く飛んでいるのはスキャンのしかたが悪いわけではなく,そういうデザインです。本文中の「緩やかな時間と曖昧な日常」の不安定さを表しているようにもみえます。


医学書院『ソローニュの森』
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=82022

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六法全書の函2013-02-27 11:26

引用の確認に『六法全書』を使っていて,数日,中断するのでいったん本棚へ。

……と,無造作に函に入れてから気づきました。六法全書の函って,付箋を付けたまま仕舞えるようになっているんですね(写真を撮るため,あえて逆に入れています)。

へぇ,でした。

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Kindleがやってきた2013-01-03 11:20

暮れに,注文しておいたKindleが届きました。
買ったのは,いちばん基本のPaperwhiteです。

なぜかWi-Fiにつながらなくてじたばたしましたが,ファームウェアをアップデートすることで解決。う〜ん,待たされたあげくに古いものが届いたわけですか〜。

Kindle-a

スクリーンセーバは活字(金属活字!)や母型の写真で,ちょっとノスタルジックです。

Kindle-b

ホーム画面。
下半分のAmazonの広告は消せないのだとか。狭い画面によけいな広告が入るのはいかがなものか。それがいやならリスト表示にせよと。

Kindle-c

で,リスト表示にしたところ。
タイトルの下にリーダがあって,読み進めるとその量が太めのリーダになります。でも,読み終わったあとに最初のページを見ると,元の細いリーダに戻っています。リーダの長さは本の分量なのかも。

「リーディングタイム機能」も余計なお世話。紙の本の柱(はしら)よりずっと本文に近いので,ついつい目に入りますが,本を読むスピードなんか計算してくれる必要はありません。読み終わる時間なんて別にわからなくていいじゃない。

そして読みながら調べられるという辞書のお間抜けなこと。ほとんどの語は「お探しの言葉が見つかりませんでした」だし,音引のあるカタカナ語は「⇒○○○○」と音引のない語が表示されるだけ。

Kindle-d

読みながらマーカーしたりドッグイヤーしたりメモを入れたりすると「マイクリッピング」に入ります。本ごとではなく,時系列。いろいろなものを読んでいると,チャンポンになります。

まあそれはいいのですが,このリストから元のページにはリンクされていない様子。その語だけではなくその語のあるページを見たいときには,メモを取ってから,改めてその本を開きページを探さないといけないわけ?


ほかにもUI(ユーザインタフェース)がどうも鈍臭いですね。反応が鈍いのは,E-Inkなのでしかたがないのでしょうが。
だったらKindle Fireにすればいい? いやいや電子ペーパーだから使ってみようと思ったのです。


そして問題なのは,読みたい本がないことです。
Kindleストアの本には有料,無料のTop100がありますが,ひととおり見てもさほど食指が動きません。有料の本はまだ2冊だけで,再読してもいいものがある無料の本(青空文庫ですね)ばかりDLしています。

図書館にしろリアル書店にしろ,たくさんの本をざ〜っと眺めて,中身をちょっと見たりしてそこから選びますが,それができないのもつまらないですね。たった100冊からでは選びようがありません。検索しても,Kindle版にはない本ばかりだし。

そしてもう一つ。高い! 500円前後で,古書の値段とそう変わりません。
たとえばジョージ・オーウェルの『一九八四年』は英語版は100円ですが,日本語版(ハヤカワepi文庫)は667円,中古品は450円〜。


そして,Kindleに限りませんが,電子本は自分のものになるわけではなく読む権利を買っているだけです。販売元の都合で中身が変更されることや削除されることもありえます(実際にそんなこともあったそうですが)。


夜,ベッドの中で明かりをつけなくてもいいので,いまのところちょこちょこと読んでいますが,すぐに飽きそうな予感も。

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セントワーズ St.WORDS2012-11-30 12:44

St.WORDSパンフ
『青い鳥文庫ができるまで』(岩貞るみこ,講談社,2012)を読んでいたら,「6 セント・ワーズ」という節が出てきました。St.WORDSというソフトを使っている部署のことです。

おお,懐かしい。

St.WORDSはNECが講談社と共同開発した校正支援システムで,そのころ三田の「日本電気オフィスシステム」へ見学に行っています。ずいぶん昔のことで,……なんと1993年。ファイルも出てきました(なんて物持ちのいい。^^)。

パンフレット(上の画像)には,「NEC中央研究所が開発した『形態素解析技術』と講談社殿のノウハウを蓄積した辞書データベースをスーパーステーションEWS4800シリーズに搭載し,さらにPC-9800シリーズをLANで統合した」システム,と説明があります。

解析サーバのEWS4800はワークステーションです。そしてこのころはNECのパソコンPC-9800が絶世期です(Windows 98とは違うので,念のため)。

見学のさいの「ご説明資料」によると,St.WORDSは「校閲作業をサポートする校正支援システム」で,「自動的に文章の校閲,校正を行うのではなく,文章中で訂正の必要があると思われる箇所をチェックし,訂正候補がある場合はそれを表示」します。

つまり,訂正そのものは人間がやるわけです。

本づくりでいうと,入稿前の原稿整理のうちの形式的な整理や原稿指定にあたります。普通は人間が原稿を読みながらチェックしていくのですが,そうですか,講談社は機械でやっているのね。

もちろんこれを通せば校正が要らなくなるわけではなく,『青い鳥文庫〜』のなかでも組版後は通常の校正をしています。

DTP組版ではなるたけ組版後の訂正を避けたいので,入稿前の原稿整理をきっちりやったほうがいい。そして,単純なチェックなら機械でもできます。ただ,欧文だと単語と単語の間にスペースがありますが,日本語はだらだらと続く文字列の解析が難しいのです。それがこのSt.WORDSというソフトのキモの「形態素解析技術」になります。

こんな大きなソフトを使わなくても,デジタルデータなら検索機能で処理もできますが,面倒といえば面倒な作業です。出版社によって,編集部によって,場合によっては人によって用語の基準が違ったりしますから。Wordの履歴を表示させて原稿整理というか原稿校正をやったりもしますね。

この見学のときに「で,どのくらい使われているのか」と訊ねたところ,「いまのところ開発に協力した部署だけ」とのことでした。その後は『青い鳥文庫〜』によると講談社では全社的に使われているようですが,それ以外はどうなんでしょうか。


余談ですが,『青い鳥文庫〜』では「セント・ワーズ」としていますが「セントワーズ」でしょう。1語のばあい中黒は入れません。

St.WORDSを検索してみたらCiNiiの論文がヒットしました。
「日本語文書校正支援システム St.WORDS」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002889642

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『サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆き』2012-07-26 13:50

ブルスィヒ『サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆き』
『サッカー審判員フェルティヒ氏の嘆き』
トーマス・ブルスィヒ著,粂川麻里生訳,三修社,2012


さわやかな色合いのカバーに,各ページの下部にはサッカーピッチの芝,上部には弾んだボールが描かれ,35字×12行とゆるゆるの組で,100ページ強。軽く読み飛ばせるかと思うと……目次もなく章立てもなく,あれっとページを繰ってみたら,なんと改丁・改ページどころか改行もありません。改行は最初の書き出しのみ。つまり,1つの小説が1パラグラフでできているのです。

内容は,フェルティヒ氏が裁判所の建物を出て駐車場においた車に着くまでのモノローグです。考えていることをその意識の流れに沿って記述している形なので,改行は入れない,入れようがないのでしょう。

話はあちこちに飛びます。サッカーの審判員になったきっかけ,亡くなった恋人のこと,その手術をした外科医のこと,外科医や裁判官とサッカー審判員の違い,恋人の父親によって言葉に突っ込みを入れる方法を知ったこと,経営している保険代理店のこと,現代サッカーになって変わってこと(「サッカーでは,ルールを『プレーする』ようになったのだ」p.67),などなど。

そんなあちこちに飛ぶ話のなかから,なぜ裁判所にいたのかや胸の痛むようなつらさが浮かび上がってきます。体裁はかろやかですが,中身は重い。久しぶりに観念的なものを読みました。


本づくりで言えば,改行のない本などちょっとたまりません。短めの小説とはいえ,挿入やトルがあれば最終行までずれていくことになります。完全原稿で入稿できればいいのですがまずそんなことはありませんから,ゲラ(校正刷り)で直しが入ります。修正があったときには改ページや改行でうまく止まる,止めるようにするものなのに,その逃げ場がありません。ところどころ組版の無理をしているところがあるのは,あとから入った修正を収めるためだったのかもしれません。

それと気になることが一つ。「訳者あとがき」に
「終曲において,フェルティヒはユーディットの墓前に花を捧げながら語る」(p.132)
とありますが,花はまだ車の助手席で,車はまだ裁判所の駐車場です。「墓前に花を捧げながら」ではありません。

☆☆☆

世界の図書館「NAVERまとめ」から2012-06-19 23:44

こんな素敵なページがありました。
貼付けコードも公開されているので,ちょっと拝借。
http://matome.naver.jp/odai/2132979425183771301

名前だけなら知っている図書館はありますが,当然行ったことがないわけで,写真で見ると圧巻です。フィデルマシリーズの『幼き子よ,我がもとへ』(創元推理文庫,2007)に出てくるのは,トリニティ・カレッジ図書館(アイルランド)っぽい? いやいやザンクト・ガレン修道院図書館(スイス)のほうがイメージが近い? もう少し堅実な感じのメルク修道院図書館(オーストリア)?