『すゞしろ日記』2014-03-09 21:48

山口晃『すゞしろ日記』弐
山口晃『すゞしろ日記』弐,羽鳥書店,2013年


「すゞしろ日記」は『UP』(東京大学出版会のPR誌)で読んでいますが,このごろはこれを読むために『UP』をとっているようなものです。

ですから一度は読んだものがほとんどですが(単行本には他の媒体のものも入っている),まとめて読むと年月を経て少しずつ変化していく様子がみえて,それもまたおもしろいところです。

連載が始まったころは7コマ×4行だったものが,いまは6コマ×4行です。コマの区切りも,紙を重ねたような形だったものが,定規で引いたようなまっすぐな線に変わりました。手書きのネーム(文字)がどっさりはいった漫画なので,コマ数が減って少し読みやすくなった……のかも,です。

単行本の『すゞしろ日記』はB5版で,A5版の『UP』よりひと回り大きくなっていて,そのぶんゆったりはしているのですが。

いちばんの変化は,おつれあいの登場っぷりでしょうか。

夫婦漫才のようなやりとりがよく出てきますが,そのご本人がごくたまに代筆することがあってそれらは脚色だとか。「すゞしろ日記」の山口画伯の妻というキャラクターであって,ご本人とは別なのでしょうね。クリエイターと暮らすのはたいへんなことのはず。多少はずぶとくならないと(そう見せないと)やっていけないでしょう。

最後のコマにオチをつけるためにだけ出てくることもあります。それがまた「オチ担当か」と笑えるのです。


1月に,往来堂書店の主催で講演会があったのですが,ちゃっかりサインももらってきました。「○○さんへ」というのは省略して,画伯のお名前だけにしてもらいましたが。

旧字体がよく使われているし,セリフ回しや生活感が古風なのでなんだか年配の男性と思い込んでいたのですが,お歳(1969年生まれ)よりはずっとお若い印象でした。


「すゞしろ日記」にあるおつれあいの言葉

 「物静かで大人な人かと思ったけど
  うるさくてガキ」

というのはけっこう図星なのかもしれません。


☆☆☆

「木を植えた男」2014-03-25 23:26


「フレデリック・バック作品集」

YouTubeで「木を植えた男」を見ていたら,「フレデリック・バック作品集」を持っているという人が貸してくれました。

「木を植えた男」
「大いなる河の流れ」
「クラック!」
「イリュージョン」
「タラタタ」
「トゥ・リエン」

の6作品が収録されていますが,やはり「木を植えた男」のインパクトが大でしょうか。

中に入っている作品紹介によると,「木を植えた男」は原作者ジャン・ジオノの創作とのこと。荒れ地に木を植え続けた羊飼い,エルゼアール・ブッフィエは実在しないのです。できすぎた話とは思いましたが。

このごろ,こういった木のある風景への憧憬は,そういう環境に育った者でないとわからないのかもしれない,と,感じています。東京都は街路樹の剪定をかなり頻繁にやっています。ほとんど幹だけになってしまった木々を見るのは胸が痛みますし,幹だけになってしまったら街路樹の意味がないのではないかとも思います。しかし,きっと,落ち葉やら虫やらの苦情が殺到している結果なのでしょう。

「木を植えた男」の結末にある,木々が茂ったことで水が湧き,花が咲き,そこに人々が集い,それもおだやかな表情の人々で,そして集落が広がる――というのは幻想にすぎないのかもしれません。

青々と茂った木々なんて,子どものころから身近になければその良さはわかりません。落ち葉は掃除がめんどうだし,虫は気持ち悪い。木なんてないほうがいい,と大方は思っているのではないでしょうか。

だからこそ,この「木を植えた男」は賞賛されるのかもしれませんし,滅びゆく環境,滅びゆく地球へのオマージュなのかもしれません。

『木を植えた男』

ちょっと前に谷中を散歩していたら,古書店に『木を植えた男』が展示されていました。「追悼」とあります。フレデリック・バックの亡くなった月でした。

☆☆☆