『TOKYO BLACKOUT』2011-04-21 15:09

福田和代『TOKYO BLACKOUT』
図書館の「予約資料確保のお知らせ」メールを受け取ったときに,なぜ予約をしたのか覚えていないことがありますが,『TOKYO BLACKOUT』(福田和代著,東京創元社,2008年)もそうでした。たぶんTwitterのタイムラインに流れていたのだと思いますが。

というくらい記憶の希薄な本でしたが,おもしろかった。真夏の東京がテロによって停電した,という話です。

最初の事件が起きたのは8月24日午後,山の中の鉄塔が爆破され,午後9時過ぎには大規模停電が発生。翌8月25日は輪番停電(福島原発の事故でもおこなわれた計画停電のこと)で復旧まで凌ごうとするものの,プログラムに仕掛けられたトラップのため停電の制御ができずblackoutとなり……
8月26日早朝の電力回復までのさまざまな人間模様を描いています。

すぐに死んでしまう人やちょっとだけ出てくる家族でもそれぞれに名前がつけられていますが(登場人物はかなりの数になります),あとでキーになる人物かもしれないので読み飛ばすわけにはいきません。小説なのにけっこうまじめに読みました。

それにしても,電気は貯めておくことができず,「電気は需要と供給が同時にバランスしていないと,停電が発生」(p.59)するのですね。手すりのないシーソーという比喩もありますが(「サマータイム制は論外」東京大教授・坂村健),これほど不安定なものとはうかつにも知りませんでした。こんなにも電気に頼った生活でいいのだろうか−−と思わないわけにはいきません。

「計画停電」というときの「計画」は,電力を供給する側にとっての計画で,電気を利用する側の計画ではないのです。消費量によっては「計画停電をすると言ったのにやらない」(こう文句をつける人が多かったですね)ということもありえるわけです。需要の予想はできるけれど,実際にどうなるかはわかりませんから。

主要な登場人物の一人(電力会社の中央給電指令所勤務)が「この需要曲線をリアルタイムに見るのが好き」(p.23)とありますが,東京電力の「電力の使用状況グラフ」をときどき見ていて,同感です。こちらは多少時間がずれていますし速報値にすぎないのですが,たくさんの人が活動している証のようでもあります。

小説の中で犯人の起こすいろいろは,現実には無理なことが多くありえないのですが,それでも一気に読ませるだけの内容です。


■時代の風:サマータイム制は論外=東京大教授・坂村健
http://mainichi.jp/select/opinion/jidainokaze/news/20110417ddm012070163000c.html

■電力の使用状況グラフ
http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html


ああ,それともう一つ。
「遙かな」が旧字体になっています(p.126)。人名用漢字は地の文には使わない方針ですね。

コメント

_ めぐま。 ― 2011-04-27 17:02:18

あー、小説で読んだようなことが現実に・・・、と今回思いました。デビュー作の『ビィズ・ゼロ』もとってもおもしろかったですよ!(ヴィズは、ヴィジビリティとかで、視界、の意)

_ allo-kobo ― 2011-04-30 12:28:30

現実はもっとシビアでしたね。

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